The Norman Conquest(イギリスのシットコム)

2021年10月15日

「The Norman Conquest」は1970年代のシットコムです。
DVDだけでなく原著を探して購入してしまったほど、とても気に入ったシットコムです。

それには2つの理由があります。

1. 「お気に入りのキャストが出演していたから」

2. 「The Norman Conquest」は、三部作で構成されていて、すべてのストーリーが同時進行で楽しめるということに感動したから。

The Norman Conquests [DVD] [1977]

三部作の「The Norman Conquest」

「The Norman Conquest」は三部作で構成されています。

三部作といっても、よくある壮大な映画のように

・前編
・中編
・後編(完結編!)

・・・のように一連の流れになっているのではありません。

ではどのような三部作なのかというと、

・「Table Manners」
・「Living Together」
・「Round and Round the Garden」

の3つのエピソードに分かれています。

登場人物はたったの6人です。

・お騒がせなノーマン
・無神経なノーマンの妻、ルース
・ルースの兄のレジ
・レジの妻、サラ
・レジとルースの妹のアニー
・アニーの隣人のトム

「Table Manners」の舞台はダイニングルーム

シットコムを探していたらこのシリーズに出くわしました。
そして、リスト順に観ていきました。

最初は「Table Manners」だったので観てみましたが、

「これはシリアスなドラマだった・・・?」
「あれ?これってシットコムだよね・・・?!」

と、DVDのパッケージを確認してしまいました。

まず、お騒がせなノーマンがやってきてアニーにちょっかいを出します。

彼が「困ったやつである」ということは分かったのですが、リビングルームでのストーリーはいたって静かな感じで進行します。

しかし、途中で誰かが部屋に突然入ってきて意味不明な行動をしたり、隣の部屋や庭で大きな物音がするといったことがありました。

「あれはどういう意味だったんだろう?」

と、未消化な気持ちのまま最初のDVDが終わりました。

ひも解かれ、崩壊していくその後のストーリー

でも、それに続く

「Living Together」
「Round and Round the Garden」

を観ていくうちにシリアスなドラマではないことがだんだん分かってきます。

「Living Together」の舞台はリビングルーム、

「Round and Round the Garden」の舞台は裏庭です。

すべてのDVDを観ると、すべての3つのストーリーが、実は、同時進行で進行していたということに気づきます。

それぞれのキャラクターに起こる出来事を違った角度から見せられます。

そして、1番最初に持たされた登場人物に対する印象ががらりと変わってしまうのが面白いです。
その後のDVDで裏切られていきます。

そしてすべてのストーリーを観終えて総括してみると、1つの大きなストーリーだったというわけなのです。

誰かの意味不明な行動も、隣の部屋での大きな物音も、どんどん判明していきます。

「この人がこんなことを?!」
「あの音はアレだったのか」
「だからノーマンはあんなところにいたのか」
「実はこんなことが起こっていたんだ!」

というようなことが分かってくるわけです。

「Table Manners」のちょっと重たい空気から一転して、家族のキャラクターが少しずつずれていくのが見どころです。

最後の「Round and Round the Garden」では、みんなの崩壊ぶりが加速します。
「そしてみんなめちゃくちゃになりました」的に幕が閉じます。

笑えるだけでなく「発見の連続」だったので、観終わったあとは感心するばかりでした。
視聴者を参加させるとても賢い構成だなと感じました。

これらのストーリーを自分なりに頭の中で整理するのが楽しいです。

「The Norman Conquest」のあらすじ

次女のアニー(ペネロピ・ウィルトン:Penelope Wilton)は実家に住んでおり、2階で寝たきりの母親の面倒を1人で見ていました。

その週は、長男夫妻と、長女夫妻が帰省することになっていました。

最初に到着したのは、長男のレジと、その妻のサラ。
長男は、いくつになっても少年のようで、それゆえ鈍感なところがありサラをイライラさせます。

サラは良妻賢母のお手本のような女性。
これまでずっと専業主婦として、家の中をまとめてきたこと、子どもたちの世話をしてきたことにプライドを持っています。

次にやって来たのは長女の夫のノーマン。
彼は一人でやってきました。

彼は、とても優しくてロマンチスト。
でも、「甲斐性なし」でした。
することなすこと予測のつかないことばかりで、周りの人を振り回します。

その昔、ノーマンとアニーはちょっとした関係にありました。
妻がまだ到着していないのをいいことに、ノーマンは「週末に二人で旅行に行こう」と、アニーを誘います。

アニーは、ずっと一人で母の面倒を見てきたことに複雑な心境を抱いています。
だから、ノーマンと二人でロマンチックな旅行をしてもいいかなという気持ちになります。

そこにお約束のように現れるのが長女のルースです。
ルースは、少々権力的な性格の持ち主で、仕事一筋。
その日も仕事から直行してきました。

そんな手ごわい長女も、ノーマンにかかるとなぜか可愛くなる笑。
ノーマンはルースを上手に操るだけでなく、次女のハートを手中に収めます。

そしてさらには、保守的なサラの心までも掴んでしまうのです・・・。

実は豪華なキャスト

「The Norman Conquest」のような作品は「trilogy(三部作)」と呼ばれています。

「The Norman Conquest」はイギリス国内の舞台で何度も上演されました。
1度に3部、同時に上演するという試みもされたようです。

Alan Ayckbournの原著も読んでみたいと思ったので購入しました。

Norman Conquests Alan Ayckbourn

(私が持っている本の表紙:とても古いです笑)

一般的な「The Norman Conquest」は、1066年にノルマンディがイングランドを征服した「ノルマン征服」を意味します。

主人公のノーマンが、心を動かすのは難しいと思われる女性たちをどんどん惹きつけていく(つまり征服していく)という意味を含んでいるのでしょう。

キャスト勢は、イギリスではよく知られている「ベテラン中のベテラン俳優」ばかりです。

・ノーマン(トム・コンティ:Tom Conti)
・アニー(ペネロピ・ウィルトン:Penelope Wilton)
・サラ(ペネロピ・キース:Penelope Keith)
・レジ(リチャード・ブライアーズ:Richard Briers)
・ルース(フィオナ・ウォーカー:Fiona Walker)

ペネロピ・キースは、この作品に出演することにより、BAFTAを受賞しています。
彼女はは70年代を代表するイギリスのシットコム2作品に中上流階級、または上流階級の女性役で出演しています。

The Good Life
To the manor born

は、イギリス内ではとても有名です。

ペネロピ・ウイルトンは、この「The Norman Conquest」頃は、可愛らしい乙女の役割ですが、イギリスでは大ベテランの女優です。
有名どころでは、

ドクター・フー
ダウントン・アビー
マリーゴールド・ホテルで会いましょう
カレンダーガールズ
ショーン・オブ・ザ・デッド
プライドと偏見
Belle
Wives and Daughters

があります。

私が特筆したいのは、トム・コンティです。
彼は、あの大人気のアメリカのシットコム「フレンズ(Friends)」に出演しているのです。

ロスがイギリス人の彼女エミリーと、ロンドンで結婚式を挙げるシーンがありましたね?
そこでロスはエミリーの両親と会います。
あの風変わりなお父さんがトム・コンティなのです。

継母役のジェニファー・サウンダーズ(Jennifer Saunders)はすぐに気がつきましたが、このお父さんは誰なんだろうとクレジットを確認したらあの「ノーマン」だったので感動しました。

イギリスの70年代のシットコムはハイレベルだったと感じます。
難しい規制や、視聴者の批判をことこまかに気にすることもなく、自由に表現できた時代だったからからということもあると思いますが、知的なイギリス人のユーモアが生き生きとしてた時代だったと思います。

3枚セットからなるDVDは、順序良く「Table Manners」から見ていくのがおすすめです。

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